意図しないドーピング(うっかりドーピング)を防止しよう 薬剤師など医療従事者の方向けページ
このページでは、アンチ・ドーピング、特に「意図しないドーピング(うっかりドーピング)」による違反者を出さないために、薬剤師などの医療従事者を対象とした、情報提供をしています。
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アンチ・ドーピングについて
ここでは医療従事者を対象とした専門的な内容になっておりますので、基本的事項は、選手・コーチなど一般の方向けページを参照してください。
禁止表は毎年1月1日に変更されます(原則1年に1回)。
最新の情報を確認してください。
I.2024年禁止表国際基準
ドーピング禁止物質及び方法は世界アンチ・ドーピング機構(WADA)の世界アンチ・ドーピング規程(CODE)、禁止表国際基準(以下、禁止表)に定められています。
禁止表は少なくとも1年に1回1月1日に更新されます。毎年10月に翌年の禁止表が公表され、翌年の1月1日から新しい禁止表が発効します。
2021年に世界アンチ・ドーピング規程が6年ぶりに改定され、禁止表に「特定方法」と「濫用物質」という新たな概念が追加されました。最新の情報を確認してください。
「特定方法」は、以前からあった特定物質の考え方を方法にも当てはめたもので、競技力向上以外の目的のために使用される可能性が高い方法です。M2.2(静脈内注入および/又は静脈注射)がこれに該当します。特定方法によるアンチ・ドーピング規則違反が意図的でなかった場合、制裁が軽減されます。
「濫用物質」はスポーツの領域以外の社会で頻繁に使用されている(濫用されている)物質です。2021年にコカイン、メチレンジオキシメタンフェタミン(S6.興奮薬)、ジアモルヒネ (S7.麻薬)、テトラヒドロカンナビノール(S8.カンナビノイド)が指定されました。濫用物質の摂取が競技力の向上とは関係ないことが立証されれば、違反の制裁が軽減されます。
2022年は「禁止物質」の糖質コルチコイド(S9)のすべての投与経路が競技会(時)のみ禁止となりました、また投与経路ごとに競技開始時点まで最低限考慮すべきウオッシュアウト期間が設けられました。さらにベータ2作用薬(S3)の吸入量の変更がありました。
2024年は監視プログラムであったトラマドールが競技会(時)禁止物質(S7.麻薬)となりました。
また、登録された採取センターで行うアスリートの血漿成分献血は禁止されないこととなりました。
2024年禁止表は、次の通りです。
◆各セクションにおける禁止薬剤の一例
表にあげる禁止物質がすべてではありません。不明な時は必ずスポーツファーマシストに確認してください。
( )内は、その薬剤の使用症例の代表例
S1.蛋白同化薬 | 男性ホルモン、蛋白同化ステロイド、クレンブテロール |
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S2. ペプチドホルモン、成長因子、関連物質および模倣物質 | エリスロポエチン製剤、HIF活性化薬、成長ホルモン |
S3.ベータ2作用薬 | ①~④の吸入薬は、添付文書に従って使用される時は禁止ではない。 ①サルブタモール(24 時間で最大1600μg、いかなる用量から開始しても8 時間で600μg を超えないこと) ②ホルモテロール(24 時間で最大投与量54μg) ③サルメテロール(24 時間で最大200μg) ④ビランテロール(24時間で最大25μg) |
S4.ホルモン調節薬および代謝調節薬 | SERMs、抗エストロゲン薬、インスリン |
S5. 利尿薬および隠蔽薬 | 利尿薬〔降圧薬配合剤〕、イソソルビド、プロベネシド(※他の痛風治療薬は禁止ではない) ※局所眼科用使用の炭酸脱水素酵素阻害薬(ドルゾラミド、ブリンゾラミド等)は禁止でない |
S6.興奮薬 | エフェドリン、メチルエフェドリン、プソイドエフェドリン(特に市販の感冒薬、鼻炎治療薬、鎮咳薬など)、起立性低血圧治療薬、メチルフェニデート ※点眼、点鼻に使用される血管収縮薬は禁止ではない。 ※アドレナリン(単独および局所麻酔薬との併用)の局所使用(鼻、眼等)は禁止されない ※コカイン・MDMAは濫用物質 |
S7.麻薬 | モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、ブプレノルフィン、ペンタゾシン(向精神薬も禁止表では、麻薬のセクションに含まれる) トラマドール ※コデインは、禁止物質ではない ※ジアモルヒネは濫用物質 |
S8. カンナビノイド | 大麻由来物質(ハシシュ/マリファナ)大麻製品、テトラヒドロカンナビノール ※カンナビジオールは除く ※テトラヒドロカンナビノール(THC)は濫用物質 |
S9.糖質コルチコイド | 抗アレルギー薬配合剤、プレドニゾロン 2022年1月1日からすべての注射使用、経口使用[口腔粘膜(口腔内(頬)、歯肉内、舌下等)を含む]および経直腸使用が禁止されています。これまで許可されていた関節注射などの局所への注射は禁止され、許可されている投与経路にも変更が生じています。 |
◆禁止方法の一例
M1.血液および血液成分の操作 | 輸血 ※酸素自体の補給は禁止ではない |
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M2.科学的および物理的操作(特定方法) | 静脈内注入および/または静脈注射で12時間あたり計100mLを超える静脈注射は禁止(特定方法) ※入院、外科手術、または臨床検査のそれぞれの過程において正当に受ける場合は除く |
M3.遺伝子および細胞ドーピング | 遺伝子編集、遺伝子サイレンシング、遺伝子導入技術 正常な遺伝子を装飾した細胞の使用 |
◆特定競技において禁止される物質
P1.ベータ遮断薬 | 静穏作用のため選手の不安解消や「あがり」の防止、また、心拍数と血圧の低下作用で心身の動揺を少なくするため禁止 アテノロール、ビソプロロール、カルベジロール、プロプラノロール、カルテオロール(点眼液も含む)、チモロール点眼液など 以下の競技で禁止されている 【競技会外においても禁止】 アーチェリー 射撃 水中スポーツ(フリーダイビング、スピアフィッシング、ターゲットシューティング) 【競技会(時)禁止】 自動車 ビリヤード ダーツ ゴルフ ミニゴルフ スキー/スノーボード(ジャンプ、フリースタイル(エアリアル/ハーフパイプ)、 スノーボード(ハーフパイプ/ビッグエアー)) |
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◆糖質コルチコイドの利用についての変更点
2022年1月から競技会時すべての注射使用、経口使用(口腔内(頬)、歯肉内、舌下等を含む)、経直腸使用がすべて禁止となりました。
注射経路の例: 静脈内、筋肉内、間節周囲、間節内、腱周囲、腱内、硬膜外、髄腔内、
滑液嚢内、病巣内(ケロイド等)、皮内および皮外などがある。
経口使用の例: 口腔粘膜(口腔内(頬)、歯肉内、舌下等)を含む。
その他の投与経路【吸入、局所投与を含む:歯根管内、皮膚、鼻腔内、眼(目薬)、肛門周囲】は、製造業者が承認を受けた用量および治療適応内で使用する場合は禁止されない。
・ウォッシュアウト期間について
禁止されている投与経路での糖質コルチコイドの使用は競技会(時)のみ禁止となるため、競技会外においては使用することが可能です。
しかし、競技会直前に糖質コルチコイドを使用してしまうと、競技会(時)の検査で禁止薬物として検出されてしまう可能性があります。そのため、競技者が競技の開始時点まで最低限考慮すべきウォッシュアウト期間が設けられました。
経路 | 糖質コルチコイド | ウォッシュアウト期間 |
---|---|---|
経口 | すべての糖質コルチコイド; | 3日 |
但し、トリアムシノロンアセトニド | 10日 | |
筋肉内 | ベタメタゾン; デキサメタゾン; メチルプレドニゾロン |
5日 |
プレドニゾロン; プレドニゾン | 10日 | |
トリアムシノロンアセトニド | 60日 | |
局所(間節周囲、間節内、 腱周囲、腱内) |
すべての糖質コルチコイド; | 3日 |
但し、トリアムシノロンアセトニド; プレドニゾロン; プレドニゾン |
10日 | |
直腸 | すべての糖質コルチコイド; | 3日 |
但し、トリアムシノロンジアセテート; トリアムシノロンアセトニド |
10日 |
ウォッシュアウト期間とは、体内に吸収された薬物がほぼすべて排出される期間を示します。
但し、個人差があるので、薬物が完全に排出されることを保証するものではありません。
ウォッシュアウト期間中に禁止されている経路を通じて糖質コルチコイドを投与する必要がある場合、治療使用特例(TUE)が申請できるようにしておくよう伝えましょう。
◆2024年から禁止 トラマドール
トラマドールは、WADAが数年前から監視していた鎮痛剤です。トラマドールはスポーツにおいてパフォーマンスを向上させる可能性があるとされています。2024年禁止表ではトラマドールは(S7.麻薬)競技会(時)禁止となりました。治療目的で使用しているアスリートは、使用した場合TUEの申請が必要となります。ウオッシュアウト期間は24時間です。
II.治療使用特例(TUE)
治療使用特例(Therapeutic Use Exemptions:TUE)は、禁止物質・禁止方法を治療目的で使用したい競技者が申請して、認められれば、その禁止物質・禁止方法が使用できる手続きです。
TUE は、世界アンチ・ドーピングプログラムの中のアンチ・ドーピング規程(世界アンチ・ドーピング規程)とそのTUE 国際基準(ISTUE)で手続きが定められています。参考資料としてガイドラインとMedical Information to Support the Decisions of TUECs が世界アンチ・ドーピング機構(WADA)によって提供されています。(https://www.wada-ama.org/)
世界規程とISTUE の和訳は(公財)日本アンチ・ドーピング機構(JADA)のホームページ(http://www.playtruejapan.org/)からダウンロードできます。
禁止物質・禁止方法は、最新の『禁止表国際基準』を参照してください。最新の国際基準の和訳はJADA のホームページ(http://www.playtruejapan.org/)からダウンロードできます。
「アンチ・ドーピングと医療-2024年版-」(日本アンチ・ドーピング機構)を加工して作成
ホットライン
東京都薬剤師会では、ドーピング防止に関する問い合わせを受け付けております。
薬剤師会アンチ・ドーピングホットライン
原則、専用用紙をFAXでお送りください。
平日 9時から17時までの受付となります。
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JADAへの問い合わせ
JADA(日本アンチ・ドーピング機構)では、問い合わせを受け付けています。
リンク:https://www.playtruejapan.org/medical/
資材・資料
店舗用POP(安心カード10面)
■3つ折りリーフレット
「ご存じですか?意図しないドーピング」(PDF)(両面印刷)
このパンフレットの転載、複製、二次加工等は禁止いたします
アンチ・ドーピングに関する外国語対応資料
(データ提供:一般社団法人 くすりの適正使用協議会)
学校薬剤師講義用資材(※会員用)
リンク
- ドーピング禁止物質の確認手順(問い合わせを受けたら)
- 薬剤師のためのアンチ・ドーピングガイドブック 2024年版
- 2024年 禁止表国際基準(英語)
- 2024年 禁止表国際基準(日本語版)
- 日本アンチ・ドーピング機構
- Global DRO(日本語)
- Global DRO(英語)
- 治療使用特例(TUE)関連書式
- 日本薬剤師会 アンチ・ドーピング活動保険
- 日本薬剤師会「アンチ・ドーピング活動に関する資材」
公益社団法人 東京都薬剤師会 アンチ・ドーピング委員会