◆◆ アルコールと健康対策 ◆◆
◆◆ わが国の飲酒状況
日本国民一人当たりの酒の消費量は、年々増え、昭和 20 年代までは凖アルコールに換算して年間2リットル以下だったのが、現在では約9リットルと4、5倍に増えています。日本の飲酒人口も着実に増えており、平成5年には 6,267 万人、大酒家は 230 万人とも推定されています。
(1)多量飲酒者
わが国における飲酒の状況をみると、年代・性別では、 30 代以上の男性の飲酒量が多く、平均1日当たり日本酒に換算して3合(純アルコールで約 60g )以上消費する人が成人男性においては 4.1 %、成人女性においては 0.3 %であるとの報告があります。多量飲酒者は、健康への悪影響のみならず、生産性の低下など職場への影響も無視できません。
(2)未成年者の飲酒
最近の未成年者を対象とした調査では、月に1〜2回以上の頻度で飲酒する者の割合は、中学3年生男子で25 . 4%、女子17 . 2%、高校3年生男子 51.5 %、女子 35.9 %と、未成年者の飲酒が日常化しており、将来のわが国における飲酒問題の拡大につながることが危惧されております。
◆◆ アルコールによる主な肝障害
1984 年から 10 年間に全国の人間ドッグで健康診断を受けた約 180 万円の検診結果によると、肝機能異常は当初 10 人に1人だったのが、調査最後年には4人に1人に激増しています。
肝臓は「沈黙の臓器」と言われ、肝障害がひどくならないと、症状を現しません。特に、毎日、日本酒に換算して5合以上を 10 年以上愛飲続ける“大酒家”と言われる人は、飲酒習慣を変えない限り、間違いなくアルコール性肝硬変になると言われております。
アルコール性が 12 〜 13 %
東京慈恵会第三病院の田中照二教授によると、「肝硬変でみると、 C 型肝炎ウイルスによるものが 50 %、 B 型が 30 %。アルコールによるものが 12 〜 13 %だが、はっきりとは言い切れない」としています。
◆◆ 主なアルコールによる肝障害の種類
○アルコール性脂肪肝
毎日、日本酒に換算して平均3合以上の飲酒を、少なくとも5年以上続けている「常習飲酒家」に起こる。常習飲酒による肝臓の脂肪代謝障害のため、食物中の中性脂肪が代謝されないまま肝細胞内に沈着した病態で、禁酒によって速やかに治る。しかし、そのまま飲酒を続けていると、高度の肝障害へと進行していく。
○アルコール性肝炎
「常習飲酒家」で、飲酒量の増加を契機に、肝細胞の変性、壊死と炎症反応を生じたもの。軽症のものから、極めて高度で急性肝不全の状態に陥り、短期間に死亡してしまうものまである。また、肝炎の程度が重ならなくても、飲酒を続けていると、時に禁酒しても肝硬変へと進行してしまうものもある。
○アルコール性肝硬変
毎日、日本酒に換算して5合以上を 10 年間以上続けた「大酒家」で、特徴的な肝臓の病変が見られる。肝臓の表面はゴツゴツして硬くなり、肝臓の働きも落ちる、アルコール性肝障害の終末像。
○アルコール性肝線維症
「常習飲酒家」で、肝臓に比較的特有な形状をした線維化が起こる。日本に比較的多い。飲酒を継続することによって、肝硬変へと進行する。
◆◆ 健康日本21に飲酒量の目標
わが国の男性を対象とした研究のほか、欧米人を対象とした研究を集積して検討した結果では、男性については1日当たり純アルコール 10 〜 19g で、女性では1日当たり9 g までで最も死亡率が低く、1日当たりアルコール量が増加するに従い死亡率が上昇することが示されている。したがって、通常のアルコール代謝能を有する日本人においては「節度ある適度な飲酒」として、1日平均純アルコールで約 20g 程度である旨の知識を普及する。
なお、この「節度ある適度な飲酒」としては、次ぎのことに留意する必要がある。
- 女性は男性よりも少ない量が適当である。
- 少量の飲酒で赤面紅潮を来たす等アルコール代謝能力の低い方は、通常の代謝能を有する人よりも少ない量が適当である。
- 65 歳以上の高齢者においては、より少量の飲酒が適当である。
- アルコール依存症者においては適切な支援のもとに完全断酒が必要である。
- 飲酒習慣の無い人に対してこの量の飲酒を推奨するものではありません。
- 1日に平均純アルコールで約 60g を超え多量に飲酒する人の減少
目標値:2割以上の減少
基準値:男性 4.1 %、女性 0.3 %(平成8年健康づくりに関する意識調査)
- 未成年の飲酒をなくす
基準値:中学3年生男子 25.4 %、女子 17.2 %、高校 3 年生男子 51.5 %、女子 35.9 %
- 「節度ある適度な飲酒」としては、1日平均純アルコールで約 20g 程度である旨の知識を普及する。
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